感想:SPLIT LIFE


J.Belemさん作のウディタ製ホラー・アクションADV。
主人公は記憶喪失(?)の状態で眼を覚まし、自分がいる建物から外に出ることができない。突然襲い掛かってくる殺人機械から逃れ、謎の少女に翻弄されながらも脱出を図るという、いわゆるソリッド・シチュエーション的な内容のゲームだ。あらかじめ言っておくと、プロローグなしにいきなり放り出されたり、画像もメニューもデフォルトそのままな印象なので最初の押しが非常に弱い。ちょっとプレイして放置する人が多いかもしれないが、その早合点はもったいないので我慢してプレイしてほしい。本作独自のシステムと凝ったリドルが登場する頃にはすっかり夢中になっているはずだ。
最大の特徴はやはりスプリット・モード。一定時間、幽体離脱のような形で肉体を離れ、障害物をすり抜けたり敵を引き付けたりすることができる。ゲームが進むに従って、スプリット・モードにおける視覚や触覚といった五感が備わっていき、探索の幅も広がる。一見シンプルなようだが、本作ではこのシステムを核にして様々な謎解きを提示しており、なかなかどうして奥が深い。どのように絡めているかはネタバレになるので詳述しないが、敵を引き付ける機能に限って言っても、主人公が攻撃できない本作で生き残るには必須の要素だ。
メインとなる謎解きについては、アクションを絡めたものももちろん楽しいのだが、アクション性がないものもプレイヤーに連想や試行錯誤を求める秀逸なものが多く、よくできている。注目すべきはその伏線の張り方だ。ヒント自体がさりげなく置かれているために気づきにくく、解法の手掛かりを得る時点で思考を要する。やり応えは十分だが、それゆえに難易度も比較的高くなっており、気軽にプレイしてクリアできるゲームではない。詰まっても作者ホームページの攻略チャートを見れば先に進むことはできるが、当然ながらそれでは本作を最大限に楽しんだとは言えないだろう。
なお、クリア後には特典として設定資料を見ることができる。中でも嬉しいのがメカ・デザインのイラストで、ゲームをプレイしていて妙に印象に残った殺人機械たちの詳細な姿が描かれている。もし作者が次回作を作る予定があるなら、このデザイン力を活かしてビジュアル面でも楽しませてくれる作品を作ってほしいところだ。