バンド紹介:Genesis


1967年、イングランドのサリー州ゴドルミングで結成。ピーター・ガブリエルPeter Gabriel)を中心に、パブリック・スクールの同級生だったトニー・バンクス(Tony Banks)、マイク・ラザフォード(Mike Rutherford)等が参加した。1969年、デビュー・アルバム『From Genesis to Revelation』を発表。その後、バンドのサウンドプログレッシヴ・ロックの方向に変化し、1970年に2ndアルバム『Trepass』を完成させる。メンバー変更によってフィル・コリンズPhil Collins)、スティーヴ・ハケット(Steve Hackett)も加入して全盛期の体制が整うと、1971年に3rdアルバム『Nursery Cryme』、1972年に4thアルバム『Foxtrot』と立て続けに傑作をものにして評価を確立した。しかし、独特のパフォーマンスで人気の立役者となっていたピーターが脱退するとフィルがバンドを主導するようになり、1986年の13thアルバム『Invisible Touch』が世界的な大ヒットを記録する等、バンドはポップなイメージに様変わりする。1999年に一度解散したが、2006年に再結成。この再結成にピーターは参加していない。


ロックの歴史を顧みると、カリスマ性のあるフロントマンがいなくなって存続の危機に立たされたバンドが、残りのメンバーで立て直しを図って以前より成功した例がいくつかある。有名なところではPink FloydDepeche Mode。だが、シド・バレットSyd Barrett)やヴィンス・クラーク(Vince Clarke)はどちらもそれぞれのバンドの最初のアルバムに参加しているに過ぎない。その点、6枚ものアルバムに参加しているピーター・ガブリエルGenesisはかなり特殊なケースだろう。『Invisible Touch』のせいで一般にはすっかりフィル・コリンズのバンドということになっているが、後世に語り継ぐべきがピーター・ガブリエル時代であることは言うまでもない。試しにレコード屋に行ってみればわかるだろうが、Genesisプログレッシヴ・ロックの棚に置かれているのだ。King CrimsonPink Floyd、Yes、Emerson, Lake & Palmerの所謂プログレ四天王に比べると格が落ちると考えられているようだが、それはGenesisの真の魅力がプログレッシヴ・ロックの範疇に入っていないからだろう。ピーター・ガブリエルはえも言われぬ魅力がある。

Nursery Cryme

Nursery Cryme

1971年発表、Genesisの3rdアルバム。ジャケットはアルバム冒頭の「The Musical Box」の背景となる物語を絵にしたもので、不気味でメルヘンチックな雰囲気、というこの時期のバンドの特徴がよく表れている。最高傑作の呼び声高い4thアルバム『Foxtrot』とは甲乙付け難いが、まだ完成していないがゆえの成長過程にある勢いを感じるならばやはり本作。他の超絶テクニシャンなプログレ勢の中で彼等が輝いたのは、ライヴ・パフォーマンスもさることながら実はその青さゆえではないだろうか。最初は異質な感のあるスティーヴ・ハケットのメタリックなギターも聴いている内にクセになる。

Foxtrot

Foxtrot

1972年発表、Genesisの4thアルバム。20分以上にも及ぶ組曲「Supper's Ready」を核としてピーター・ガブリエルの個性が遺憾なく発揮されており、ライヴでも本作の演劇性を活かしたケバケバしい仮装や道化のような所作で独自の世界を構築し、人気を博した。トニー・バンクスのメロトロンが存在感を示す壮大なサウンド・スケールも印象的で、まさにバンドの集大成と呼ぶにふさわしい。しかし一方で、Genesisピーター・ガブリエルのワンマン・バンドだという認識を助長し、結果的に黄金時代終焉の種を蒔くことにもなった罪なアルバムのようにも思える。