感想:BloodOfHell


moniさん作のウディタ製ホラー・ガンシューティング
舞台はアメリカ北西部の中規模程度の都市。一夜にして廃墟と化し、バケモノが徘徊するようになった街を脱出せよ…と言うと某有名コンシューマーゲームが思い浮かぶ(ただし、向こうは中西部の都市)。ゾンビは出てこないものの、大方がプレイ前に抱く期待を裏切ることはないだろう。緻密なグラフィックとシステム、ツボを押さえた演出や渋い雰囲気は、本作がフリーゲームであることをしばしば忘れさせるほど。ウディタ製ゲームには市販ゲームと比べても遜色ない作品がいくつかあるが、いい意味でも悪い意味でもフリーゲームらしい"我"がほとんど感じられない作品というのは珍しい。こういう抑制された作りは個人的に好みだ。
操作はキーボードによる移動、マウスによる照準と射撃が基本となっている。序盤は所持している武器の性能と不慣れな操作という状況下でかなり慎重な捜索が要求されるが、武器が強力になるのに合わせて敵も人海戦術で迫るようになり、アクション性が高くなる。群がる敵にマシンガンをぶっ放す中盤以降はかなり爽快。ラスボス戦に至ってはもはやアクションゲームと言っていい。この傾向を是とするか否かはプレイヤーの嗜好次第だが、ガンシューティングを標榜する以上はこれくらいやるべきだろう。
ゲーム画面はトップビュー形式を採用している。当今流行のFPSと違って全方位の視界が確保されるため、ホラーには不向きではないかと思ってしまうが、扇状視界を取り入れているためまったく問題ない。見えない敵の咆哮はホラー的にもゲーム的にも十分機能しているし、一人称視点よりもアクション性を強く感じることができるという利点もある。もちろん、FPSを実現するための技術的な問題からトップビューにせざるをえなかったという話は大いにありうるが、トップビューにはトップビューの魅力があるということだ。
全体的に難易度はそれほど高くなく、流血等の若干のグロテスク表現に気後れしないのであれば気軽にプレイできる。弾薬や回復アイテムは敵を倒した際に得るポイントで際限なく購入できるため、慣れると緊張感がなくなる恐れがあるが、お気に入りの銃を好きなだけ乱射するのが本来の楽しみ方なのかもしれない。
バージョンアップでライフルに独自の視点を取り入れるといった大幅機能追加があったり、作者が続編の制作について言及していたりと今後の展開も気になるところだ。続編では事件の真相が明かされるようだが、この手のゲームで下手に説明が始まると急に萎えることがあるので、謎は謎のままにしておくというのも悪くない気がするが…。例えばホラー映画の名作では、トビー・フーパー(Tobe Hooper)の『悪魔のいけにえ(The Texas Chain Saw Massacre)』で一家が殺人に手を染める経緯には触れないし、ジョージ・A・ロメロ(George A. Romero)の『ナイト・オブ・ザ・リビングデッドNight of the Living Dead)』でゾンビが発生した原因は定かでない。ホラーにおいてシチュエーションは所与のものと割り切るのは強力な方法論だと思う。